2020/07/04 心理学科
先日4歳の娘が、保育園のお友達が嘘をついたと言うので、私は当の本人に「嘘をつける?」とたずねてみました。嘘をついたことがあるか、ではなく、嘘をつくことが「できるか」を訊くのはおかしなことのように思われるかもしれません。親としてわが子の正直さや素直さに関心があったのと同時に、子どもの心の発達という心理学の研究者としての興味があり、あえてこのような訊き方をしてみたのです。
嘘をつくためには、本当のことを隠したり自分の本心を抑えたりしながら、それらと異なることを作り出して話すことになるので、頭を働かせる必要があります。また、自分が知っていることを相手が知らないことや、自分がこう言えば相手はこう思うだろうということなど、相手の心を理解する力も必要です。人はこのような能力をはじめから備えているわけではありません。たとえば見てはいけないと言われたものを見てしまったのに、「見ていない」と否定するような、最も単純な嘘は3歳ころから始まると言われています。また、相手を傷つけまいとする嘘(白い嘘)は、だいたい小学生の頃と言われています。嘘をつくことができるということは成長の証ですね。
とはいえ、「嘘をつかないこと」が社会の基本的なルールで、それもまた子どもの発達過程で身についてきます。しかし、人によっては嘘をつく能力の方ばかりが発達して大人になることがあるようです。ときどき、上手に嘘をついて不正に利益を得たり、責任を逃れたりしているのではないかという人がいて、世間を騒がせますね。上手な嘘に対抗するために、私たちの社会には「嘘発見器」が必要なようです。
というわけで、7月19日(土)のオープンキャンパスでは、心理学科の体験セミナーで「嘘発見器」と呼ばれるものについてお話しします。正確には「ポリグラフ検査」と言われています。その開発には心理学が深く関わっており、現在、犯罪捜査を支援する技術として実際に活用されています。捜査員が質問をして、容疑者が「いいえ」と答えたときの身体の活動を調べる、ということはよく知られているかもしれませんね。では、本当に、嘘をつくときに身体の活動が変化するのでしょうか。当日は実演をしてみたいと思います。
さて、嘘をつくことができるかと訊かれた娘が何と答えたのかというと、「嘘はつかない。前は嘘ついたことあるけどね」でした。そのようなことを無邪気に言うので、成長云々を忘れて思わず笑ってしまいました。しかし、娘がいつ、どこで、どんな嘘をついたのかは謎です。ポリグラフ検査で取り調べをしてみる必要があるかもしれません。
(心理学科 大隅)