2018/09/05 心理学科
目撃者の証言~犯罪心理学と認知心理学~
事件の捜査や裁判などにおいて、「目撃者の証言」は非常に重要な情報として扱われています。しかし、これまでの記憶に関する研究では、記憶はさまざまな要因によって容易に変容してしまうことが明らかになっており、一般的に目撃証言の信頼性は低いと言われています。
例えば、ある事件を目撃してから証言を行うまでの間、目撃者はテレビを見たり、買い物に出かけたりと、事件以外の多くの情報にさらされます。このような、事件とは無関連な記憶が目撃証言の内容に影響を及ぼしてしまうことがあるのです。また、事情聴取の方法によっても目撃証言の内容が変化してしまうことが知られています。例えば、自動車事故の目撃者に、「車が"接触"したとき、どれくらいのスピードが出ていましたか?」と「車が"激突"したとき、どれくらいのスピードが出ていましたか?」と尋ねる場合では証言の内容に違いがみられ、後者の方が車のスピードはより速くなってしまいます。
誤った目撃証言は、絶対にあってはならない誤認逮捕や誤判にもつながり得るものです。認知心理学では、記憶のメカニズムや目撃証言の特性を明らかにするだけでなく、正確な目撃証言を得るための事情聴取の方法の開発など、目撃証言の信頼性を高めるためのさまざまな研究が活発に進められています。
(心理学科 西山)