2017/09/30 心理学科
ある日,リスとネコがばったり出会いました。
...という場面の絵です。
この場面を見て,みなさんは何を想像するでしょうか?「やあ,久しぶり。どうしてた?」「まあぼちぼちだね」みたいに,お互い親しげに声をかけるファンタジーを思い浮かべる人がいるかもしれません。あるいは,「おまえ,なんだよ,見かけない顔だな」とネコが近寄ってきて,リスがびっくりしているところ,に見える人もいるでしょう。このあと,もしかするとこの2ひきは,連れだって一緒にお茶を飲みにいくかもしれないし,もしかするとリスが後ろの木に逃げ登ってネコが追いかけるというスリリングな展開になるのかもしれません。
この2ひきが何をしているところなのか,と問えば,たぶんいろいろな答えが返ってきます。同じ場面を見ても,人によって,心の中に生まれてくる"物語"は違うのです。臨床心理学のある分野では,こういった"物語"の違いがなぜ起こるのか,それをどのように心理療法に役立てることができるのかを研究しています。人はみな,本人すら自覚していないようなこれまでの経験の記憶や複雑な感情を心の奥(深層)にかかえています。"物語"のイメージの多くはそこから生まれてくるものだと考えられます。つまり,その"物語"を表現することは,深層から"何か"をくみ上げてくるということであり,自己治癒的な効果があると考えられています。
絵からおはなしを創るというのは,深層から"物語"的なイメージをくみ上げる方法の1つです。そのほかにも,いろいろな方法が考案されています。
おもしろいな,と思った人,深層心理学の勉強を,ぜひ,してみてください。
(心理学科 田中)