2023/08/28 お知らせ
人間環境大学環境科学部フィールド生態学科岡久研究室では、豊橋総合動植物公園、長野アカモズ保全研究グループと共同で、全国で残り200羽程度しかいない渡り鳥アカモズLanius cristratus superciliosusの生息域外保全を試みています。
このたび、長野県内において親鳥が放棄した巣などから採取した卵を豊橋総合動植物公園に移送し、世界で初めてアカモズ9羽の人工孵卵・育雛が成功しました。
このほかに、野生下で衰弱したヒナ2羽を保護し、計11羽のアカモズを飼育しています。人工育雛の成功は、絶滅の危機に瀕しているアカモズの保全に対して極めて重要な成果です。
↑今回の人工育雛で育ったアカモズ
【参考】
亜種アカモズ:日本のみで繁殖し東南アジアで越冬する渡り鳥である。環境省レッドリストで絶滅危惧IB類に選定され、種の保存法において国内希少野生動植物種に指定されている。本州個体群については、繁殖地の環境は大きく変化していないにも関わらず、帰還率や繁殖成功が低下し、個体数が減少している。2022年時点で45つがいのみが確認されており、2026年にも地域絶滅することが予測される。本種の絶滅を回避するためには、生息域内保全を進めると同時に、生息地域外保全を推進することが必要とされている。
《担当教員略歴》
岡久 雄二 人間環境大学環境科学部フィールド生態学科 助教
博士(理学)。立教大学特別研究員、環境省野生生物専門員、同省希少種保護増殖等専門員を経て、2022年より現職。アカモズ保全ワーキンググループ代表、IUCN SSC Stork Ibis Spoonbill specialist group、White Bellied Heron Advisory Committeeなどを務める。佐渡島におけるトキ野生復帰を主導してきた経験をもとに、生息域内保全と生息域外保全を連動させた保全生物学的研究に取り組む。