2018/08/29 環境科学科
"土の甘さを測ってみよう"
9月2日にオープンキャンパスで私が担当する体験セミナーのテーマです.
そうです,私の研究室では,より甘い土を求めて各地で土を調査しております(写真参照).
...はい,半分正解で半分冗談です.
土をそのまま口にしてみて,"甘い"と感じることは(基本的には)ないでしょう.
オープンキャンパスで,土をそのまま食べてみてください,と言うことはありませんので,ご安心ください.
オープンキャンパスで扱う"土の甘さ"とは,土に棲む微生物にとって餌資源として利用しやすい,分解しやすい有機物のことです.分解しやすい有機物の代表的なものとして,各種の糖類が挙げられることから,分解しやすい有機物が多い≒糖類が多い≒甘い,として捉えた訳です.
分解しやすい有機物が多く含まれている土は,そこに棲む微生物や土壌動物にとって,どのような環境でしょうか.利用しやすい餌資源の豊富な,とても快適な環境ですね.
逆に考えると,分解しやすい有機物があまり含まれていない土は,そこに棲む微生物や土壌動物にとって,餌資源の少ない,過酷な環境と考えることができます.
さらに考えると,分解しやすい有機物をあまりにも多く含む土は,いかがでしょうか.必ずしもそこに棲む微生物や土壌動物にとって,快適な環境ではなくなってしまうかもしれません.なぜ?と思う方.ぜひ9月2日のオープンキャンパスに.
このような,生物にとって快適,不快な環境条件というものは,目で見て分かるものもありますが,多くは"測定"をしてみないと分かりません.
上に記した土壌微生物や土壌動物にとっての餌資源の形態,その量もそうですし,畑の作物にとって健康でいられる土の状態,等も同様です.
その他,野外の生物にとって快適な森林環境とは,海洋生物にとって快適な水環境とは,なども含めて,測定をして現状の環境を知り,様々な実験を通して作物や動物を含んだ生物にとっての快適環境条件を知り,その現状の環境と,生物にとっての快適環境条件とのギャップをどのように埋めていこうか,といったあたりまでを考えるのが,人間環境学部環境科学科の物質循環領域です.
他にも,環境問題の予防策として環境基準値を守る,という目安があります.そのような基準値の妥当性の検討や,決定のプロセスも,物質循環領域で学べます.
この,基準値を超えているか基準値内かは,測定をしてみないと分かりませんし,これまで述べてきた内容から,環境の状態を知るためには,測定を行うことの必要性が分かっていただけたかと思います.
『測ってみなけりゃ始まらない』
自然環境のプロセスや現状と真正面から向き合いたい人,陸も海も川も含めた野生生物にとって快適な環境について追及したい人,人間活動によって生じる汚染や物質動態の変化を理解しその対策を提案したい人などなど...,物質循環領域は,測定を通じて,様々な環境を扱います.ぜひ一緒に学びましょう.
(環境科学科 藤井芳一)