人間環境大学

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【総合心理学部】心理学のコラム~人の振り見て我が振り直せ~

人の振り見て我が振り直せ

夏の終わりはさみしいような気分にもなりますね、

でも、実りの秋とも言いますし、頑張ってきたことが形になることも期待したいですね。

 私は浪人生だった頃、なかなか自習室で勉強しても集中できなかったのですが、

いつも一番前の席を早朝に場所取りして、

遅くまで頑張っていた人たちのことが心に残っております。

もうちょっとあの姿勢を見習えたらなと‥‥。今日のテーマは「人の振りみて我が振りなおせ」です。

動物は他者を観察して学べるか?

他者の行動をよく見て、学びを得るということは、

しばしば人間らしさの象徴のように捉えられており、人間以外の動物では苦手なことだと考えられてきました。

しかし、これまでの研究を調べてみると、動物を対象とした研究数は少なく、

果たして本当かなと僕は思いました。

特に、医学や薬学の分野で活躍するネズミを対象とした研究はほとんどありませんでした。

しかも実験室のネズミはそもそも一匹で飼育されることが多く、社会的な面が調べられているとも言えませんでした。

このような訳で、僕はネズミが他者から学べるかどうかを調べたくなりました。

ネズミは迷路の中から餌を探すのが得意なので(空間探索)、

迷路の中で餌を探している状況を観察してもらいたいなと思いました。

迷路としては、8方向放射状迷路というのを使いました。

この迷路は、真ん中から8本の枝が出ていて、その先に餌皿があります。

迷路の中はどこを見ても同じ景色ですが、迷路の外側には位置や方向がわかるように手かがりがあります。

ネズミは迷路外手かがりを確認しながら、餌を探すことができます。

ネズミは他者を観察できるのか!

二匹一緒に飼っているネズミをペアで実験室に運び、一匹を探索させ、

もう一匹には真ん中でそれを見ててもらう実験をしました。

最初に探索するネズミが餌を取り終えたら、

飼育箱に先に戻して、装置をよく掃除して、迷路内に餌を補充しました。

その後、観察してたネズミに一匹で迷路の中を探索してもらいました。

これを1日1回、30日間、続けました。

この結果、観察した後に探索したネズミは、非常に効率的にテキパキと迷路の中の餌を見つけるようになりました。

空間探索の効率の良さは、

実験結果の比較のため観察個体なしでずっと一匹で探索させたネズミをいくら練習を積ませたとしても、

決して追いつかないレベルでした。

また、観察されていた、先に探索したネズミは、初期においては探索が非常に遅くなっていました。

後半は、実験結果の比較のため観察個体なしでずっと一匹で探索させたネズミと同じくらいの探索は

できるようになりましたが、観察した個体のような効率性は身につきませんでした。

つまり、観察個体は初期の頃にのそのそしている他個体の行動を観察したのにも関わらず、

むしろ通常より効率的な空間探索行動を身につけたと考えられました

( 2017年のRoyal Society Open Scienceという雑誌に掲載)。

実験をしてみた結果、ネズミは観察が苦手などころか、

観察した内容よりも、より効率的な行動ができることがわかりました。

単なるモノマネではなかったのです。

ネズミたちの学ぶ姿勢を見習って行きたいなと思いました。

また、このように、人間が心についてあれこれ思っていることは、

実際には精密な実験をしてみないと、その真偽は全くわかりません。

ぜひ、総合心理学部にきてください、一緒に心理学実験しましょう!!

人間環境大学 教授 高野 裕治

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